科学研究費助成事業 基盤研究(B)「がんサバイバーの生活再構築を支援するオントロジーを活用した看護システムの開発」

ご挨拶

 私たちは,がん患者さんとご家族への支援に関する研究に取り組んできました.この度の研究プロジェクトでは,がんサバイバーの皆さんが,療養生活を再構築する際に見出した暗黙知を,がん看護学とオントロジー工学の融合により可視化する取り組みに着手しました.

 「がんサバイバー」とはがんを体験されたすべての方を示す言葉です.この言葉には,がんと診断された後も“患者”ではなく,社会の中で暮らす一人の“人”として生きていきたいという体験者の方々の思いが込められています.この考え方の広がりと同時に,がんの診断や治療に伴って生じる様々な課題に対処しながら社会生活を送るための支援の重要性も強く認識されるようになりました.その支援の一環として私たちは,がん体験者の方々ががんとその治療による心身の変化や後遺症に対してご自身で経験的に見出された工夫・取り組みをお互いに共有できるように支援することを目指して研究に取り組んでいます.

 コロナ禍で患者会や患者サロンの対面開催も難しくなり,他の人はどうしているのかという情報が入手しにくい時期もありました.この看護システムが完成されることによって工夫や取り組みの共有を行うことができれば,がんサバイバーの皆様の生活を送りやすくなるための一助になるのではないかと考えています.

 サイトは開設したばかりですが,研究の進展に伴い充実させていきたいと思います.どうぞよろしくお願い致します.

(荒尾晴惠・山本瀬奈)